Home / 恋愛 / 一通の手紙から始まる花嫁物語。 / 28話-3 決して渡さない。

Share

28話-3 決して渡さない。

last update Last Updated: 2025-05-27 20:01:35

* * *

その後、エルバートはフェリシアと共にテントに到着し、ユリシーズ達と合流し、フェリシアとディアムのみ連れて特別なテントに入る。

するとエルバートはディアムに全ての事情を話す。

そしてディアムがゼインとアベルにその事を伝えるも、カイ、シルヴィオもアベルから聞いたのか、ゼインとアベルと共に特別なテントの中に入って来た。

「軍師長、暗殺されかけたって本当ですか!? 心配しましたよー!」

カイが声を上げながらエルバートの体を大きく揺らす。

「うるさい、静かにしろ。他の者に聞かれたらどうする」

「それにフェリシアは今、ここで眠っているんだぞ」

エルバートが怒ると、カイは体を揺らすのを止め、黙る。

「それでエルバート様、命を狙ってきた者の正体は分かったのですか?」

ゼインが問う。

「あぁ」

エルバートはブローチの中心に突き刺さる剣先の欠片をゼイン達に見せると全員の表情が強張る。

山道でも剣先の欠片を見てそういうことだったのかと気づいたが、

ここは明るく、より剣先の欠片に装飾された高貴な太陽の模様が鮮明に見える。

この天空山、何かあるのかもしれないと思い、様子をずっと伺っていたが、

本命の魔も思いの外早く討伐出来たこと、

そして流星群でフェリシアとふたりきりにさせたのも、全て計算の内か。

まさか、“私の暗殺”が本来の目的だったとはな。

「明日、宮殿に戻り次第、皇帝に報告する」

エルバートはゼイン達に宣言した。

* * *

フェリシアは一晩、特別なテントに泊まり一夜を明かし、その翌朝。

テントの片付けを手伝い、荷造り等々して下山し、

行きと同じくゼイン、サフィラと馬車に乗り、高貴な馬に騎乗したエルバート、ユリシーズ、ディアム、ハロルドとその軍に守られながらエセリアル宮殿へと戻る。

その後、しばらくして、皇帝の間に入り、玉座の階段前でゼイン、エルバードと共に跪き、ユリシーズとハロルドも後ろで跪いた。

すると側近の代わりに皇帝の隣に立つ麗しき第一皇太子、シトラス・エセリアルが皇帝に目で合図を
Continue to read this book for free
Scan code to download App
Locked Chapter

Latest chapter

  • 一通の手紙から始まる花嫁物語。   32話-5 眠りから覚めたなら。

    * * * それから一週間後。 皇帝の間にてエルバートの昇格式が執り行われ、エルバートの父であるテオと母のステラ、公爵、伯爵等の偉い方々がいる中、フェリシアはエルバートの姿を見守る。 前日にルークス皇帝から次期皇帝候補にフェリシアとエルバート、どちらかを入れたいと申し出があった。 けれど、エルバートならまだしも自分が皇帝の立場になるなどとんでもないと断り、エルバートもまたゼインがいる内は考えられないと断り、ルークス皇帝の次に偉い帝爵(ていしゃく)に昇格することのみを承諾し、今に至る。 高貴な軍服を着たエルバートはルークス皇帝から帝爵の証である勲章を受け取り、また一段と凛々しくなられたエルバートの姿を見られて良かったと心から思った。 そして翌日の夜。 エルバートに手を握られ、アルカディア宮殿のある場所に連れて行かれる。 ピンクの花が中庭の一面に美しく咲いていた。 甘い花の香りが漂う。 「ご主人さま、とても綺麗なお花ですね」 「あぁ、この花は白き花だからな」 「え、ですが、色が」 「ここだけ月の光が良く当たるからか、色が変化したようだ」 エルバートは手を放すと薄着で寒そうに見えたのか完全に直ったチェーン付きの勲章のようなブローチが煌めく魔除けコートを着せられ、 「このブローチが直った時、お前は必ず起きると信じていた」と、 胸元のポケットから高貴な箱を取り出し、箱の蓋を開けて見せる。 すると箱の中にはチェーンの部分がすべて複数の満月のような宝石で、ペンダントヘッドの中心に神聖な煌めきを放つダイヤが付いたネックレスが入っており、フェリシアは驚き固まる。 「このネックレスは魔除けとファッション、両方使えるネックレスだ。受け取ってくれるか?」 (あ、だからここへ来る前にネックレスは外して来いとおっしゃったのね……) 「は、はい。付けて頂けますか?」 「あぁ」 ネックレスを付けてもらうと、ダイヤがきらりと輝き、エルバートは何故か距離を取る。 付けてなどと、おこがましかったかもしれない。 フェリシアは気落ちする。 するとエルバート

  • 一通の手紙から始まる花嫁物語。   32話-4 眠りから覚めたなら。

    エルバートが詠唱した次の瞬間、フェリシアの右手の甲が輝き、印が表れる。すると窓から月光が差し込み、アルカディア宮殿の礼拝堂の深夜を知らせる鐘が鳴り響いた。* * *フェリシアは18歳の姿のまま、生まれ育った家で両親と共に暮らしていた。もうどれくらい経つだろう。これは夢なのだと分かりながらも母に髪を解いてもらったり、一緒に朝食を作って味見したり、お洗濯したり、縫い物をしたり。公務から帰って来た父を母と出迎え、母と一緒に作った夕食を父が食べて褒めてくれて、とても嬉しい。けれど、父の夕食を食べる姿が愛する人と何処か重なり寂しい気持ちになる。両親と過ごす温かな日々は幸せで、両親と毎晩中庭で白き花を見ながらずっとこのまま両親と共にいたいと願う。抱き締めて欲しい、抱き締めていたいとさえ願う。だけど。フェリシアは深夜、家を一人、出ていく。そして決して振り返ることはせず、ただ前だけを向いて歩き続けるも涙があふれて止まらない。お父さま、お母さま、ごめんなさい。やっぱりこのまま諦めたくありません。(わたし、ご主人さまにもう一度、会いに行きます)「わたしは、ご主人さまと、幸せに、なりたい」願いを発した次の瞬間、フェリシアは温かな月光に照らされた――――。* * *鐘が鳴り響く中、エルバートは月光で顔を柔らかく照らされたフェリシアの右手を取り、右手の甲の印に優しく口づけのキスをする。その瞬間、髪飾りの白き花が輝いて開き、フェリシアの体が神々しい光に包まれ、寝た状態で浮かび上がっていく。そしてフェリシアの髪は以前にもまして美しいピンクゴールドに染まり、ベールのようなチュールレースの長いリボンが触覚付近から空中に靡き、華やかで豪華な美しきドレスをまとった完全なる絶世の伝説の祓い姫の姿へと変わり、光に包まれたまま、降りてくる。すると立ち上がったエルバートがお姫様抱っこでフェリシアの体を受け止め、そのまま跪く。やがて光は消え、フェリシアの両目がゆっくり開く。「フェリ、シア?」

  • 一通の手紙から始まる花嫁物語。   32話-3 眠りから覚めたなら。

    * * * エルバートはルークス皇帝に命じられた通り、執務室の仮眠ベッドで眠り、回復した翌日の朝。 執務室で机の椅子に座り昨日こなせなかった山積みの書類に目を通していると、ユナイトが執務室に駆け入ってきた。 「はぁ、エルバート様!」 「そんなに慌ててどうした?」 エルバートは椅子に座ったまま尋ねる。 「フェリシア様を目覚めさせる呪文の書が宮殿内にあるかもしれません」 ユナイトが発した言葉を聞いた瞬間、エルバートは机に手を突き、勢いよく椅子から立ち上がる。 「至急、皆に探させ、私も探す」 その後、エルバートはディアムに伝え、 宮殿に仕えている者達にも通達が行き、懸命に探し始め、 エルバート、ディアム、ユナイト、ゼイン、クランドール、皇帝の側近、リリーシャ、クォーツも必死に探し、 皇帝の間に重要な昔の書物が隠されていることが分かった。 そしてエルバートを含めた8名とルークス皇帝がその書物が隠されている場所に集まると、それは皇帝の座の後ろの壁の中にあり、壁に書いてある古代文字をユナイトが解読する。 「どうやら、古代の書の箱の中に祓い姫を目覚めさせる呪文の書が入っており、古代の書の箱を取り出すには、ルークス皇帝が壁に書いてある呪文を唱える必要があり、唱えると壁が開き、箱の蓋も開くようでございます」 「ユナイトよ、解読ご苦労。ではこれより詠唱する」 ルークス皇帝は壁に両手を当て、口を開く。 「皇帝の聖名に誓い、アルカディアの神々の陽光に祈る」 「我に道を示し、封じられし書の鎖を光の如く解き放て!」 詠唱を終えると、壁が開き古代の書の箱が現れ、続けて蓋が開いた。 そして、ルークス皇帝の手によって呪文の書が取り出され、再びユナイトが解読する。 「月が頂点に昇り深夜の鐘が鳴り響く時、祓い姫に白い花の髪飾りをつけ、真に愛する人がその呪文を唱え、祓い姫の右手に浮かび上がる甲の印に口づけした時、回復の魔法が発動するとのことでございます」 エルバートの瞳に光が宿る。 今月、月が頂点に昇る日は3日後か。 (私が必ず、フェリシアを目覚めさせてみせる)

  • 一通の手紙から始まる花嫁物語。   32話-2 眠りから覚めたなら。

    そして午後には帝都の魔を全て浄化したアベルとカイが軍達と共にアルカディア宮殿に戻り、フェリシアのことを知ったアベルとカイは顔を曇らせる。 だが、アベルはエルバートの肩をぽんと叩き、カイと励ましの言葉をかけ、 リリーシャはフェリシアが目覚めるまで宮殿に残ると言い、 ラズールとクォーツは交代制でブラン公爵邸の管理をしつつ、 エルバートを手伝うディアムやリリーシャと共にアルカディア宮殿の復旧の手伝いをする。 そしてエルバートは復旧と執務をこなしながら、お可哀想に、とフェリシアの部屋の花瓶に白き花を飾るメイド長に憐れみられ、ディアムに心配されつつも大丈夫だとフェリシアの看病をしながら壊れたままだったチェーン付きの勲章のようなブローチを直し続け――、とある深夜。 「エルバート」 寝室のベッドの横に立ち尽くした状態のルークス皇帝に名を呼ばれ、エルバートはその横で跪きながらハッとする。 「何度呼んでも上の空とは」 「大変申し訳ありません」 「ディアムからの報告を側近から聞いたところ、フェリシアが眠りについてから3週間程経過してもまだ、復旧と執務をこなしながらフェリシアの看病を続けているそうであるな」 ディアムめ、余計な報告を。 「大丈夫か? 我から見ても相当疲弊しているように見えるが」 「私は疲弊などしておりませんので大丈夫にございます!」 エルバートは強く否定し、ハッとする。 「ルークス皇帝、今のは……」 「良い。お前をこうして追い詰めた状況にしたのは我自身なのだからな」 ルークス皇帝は儚げな表情を浮かべる。 「お前とフェリシアに幸せになってもらいと思いながらもフェリシアを我だけのものに出来たらという想いもあり、魔に隙を突かれ乗っ取られてしまった」 「本当にすまなかった」 ルークス皇帝は頭を深々と下げる。 「ルークス皇帝、どうか頭をお上げ下さい」 ルークス皇帝は頭を上げ、エルバートを見る。 「私はルークス皇帝を失わずにこうして話が出来たこと、大変嬉しく思っております」 「我も同じ想いだ」 「そして剣を交えた時に感じたが、幼少の

  • 一通の手紙から始まる花嫁物語。   32話-1 眠りから覚めたなら。

    * * * エルバートは部屋の椅子に座り、ベッドで眠ったままのフェリシアの右手を握る。 「フェリシア、どうか目覚めてくれ」 「頼む」 エルバートは両目を閉じ、強く祈った。 * * * フェリシアが目を閉じた後、双子のメイドのシエルとノエルが祓いの力を持つ天才医師を連れて皇帝の間に駆け付けた。 なぜか、アルカディア宮殿の魔が急激に弱くなり、 自分達とルークス皇帝の親衛部隊、ゼイン、クランドールの軍で宮殿内の魔の浄化が全て完了し、宮殿外も、間もなく、魔の浄化が完了し、アベルやカイ、その軍達による帝都の魔の浄化が完了するのもそう時間は掛からないとの報告を受けた。 魔が急激に弱体化したのは恐らく、ルークス皇帝を乗っ取った魔を浄化したことによる影響だろう。 「では、殿上医(てんじょうい)は、ルークス皇帝から治療を、シエルとノエルはまずはユナイトの治療を開始して下さい」 「了解しました」 「かしこまりました」 医師は承諾し、シエルとノエルも同時に承諾し、ユナイトの治療にあたる。 そしてユナイトが目覚めると、医師と共に治療をしていき、宮殿外も魔の浄化が完了したとの報告をルークス皇帝の親衛部隊から受ける中、ルークス皇帝の側近のリンク、ゼイン、クランドール、ディアム、リリーシャ、クォーツ、ラズールは意識を取り戻して起き上がり、ルークス皇帝は動けないものの意識は戻り、エルバートも治療を終える。 しかし、フェリシアだけは医師とユナイトが持てる力を使い懸命に治療を施しても一向に目覚めない。 「何故、目覚めない?」 「エルバート軍師長、大変申し訳ありません。私共ではもう手の施しようが……」 医師が謝罪を口にすると、リリーシャの瞳が揺れる。 「フェリシア様、そんな……」 リリーシャの落胆した言葉とすすり泣きを聞いたユナイトは、自身の両手をぐっと握り、口を開く。 「私がフェリシア様に禁忌の呪文でもある破滅の呪文を手紙でお教えしなければこのようなことには……」 「禁忌の呪文でもある破滅の呪文、だと? 一体どういうことだ?」

  • 一通の手紙から始まる花嫁物語。   31話-7 すべてを救う為に。

    * * *(このまま、ご主人さまにルークス皇帝をやらせる訳にはいかない)フェリシアは邪気による胸の締め付けに苦しみながらも右腕を動かし、ドレスが少し破けつつも邪気に右手で触れ、祓いの力を使う。すると瞳が神々しく輝き、包まれた邪気を全て祓い除け、自ら拘束を解き放ち駆けて行く。そしてエルバートとルークス皇帝の間に入った。エルバートはギリギリで攻撃を止める。「フェリシア、お前、死にたいのか!?」「はい。このままルークス皇帝をご主人さまがやるとおっしゃるのなら」「邪魔をするな! 私がルークス皇帝をお隠れにせねば、この皇国は滅びるんだぞ!」「それでも、ご主人さまにルークス皇帝はやらせません」「思い出したのです。ルークス皇帝をお救い出来る呪文を」「ですのでわたしがルークス皇帝をお救い致します」「それは我の物になると言うことか?」冷たい顔のルークス皇帝が尋ねる。「我の物になれば特別にこやつから出て行ってやるぞ」「お気持ちにはお答え出来ません」フェリシアに2度断られ、ルークス皇帝の体から邪気が溢れ、急激に膨張する。「それでも、ルークス皇帝はわたしにとっても大切な存在なことに変わりありません」「だからルークス皇帝、少しの間、魔を押さえていて下さい」(そしてご主人さま、ごめんなさい)(この呪文を唱えた後、わたしは破滅します)(けれど、ルークス皇帝とアルカディア皇国をお救いし、必ず守り抜いてみせます)フェリシアは覚悟を決め、エルバートに呪文の言葉を耳元で告げ、ドレスのブローチを左手で掴み、右手を前に出す。するとエルバートも手を前に出し、その手に自分の手を重ね、フェリシアとエルバートはルークス皇帝を見据え、そして。「破滅せよ(ラルナ)!」呪文を同時に叫んだ。その瞬間、光の渦が天からルークス皇帝に向かって降り注ぎ、ルークス皇帝は光の塊となり、そこから眩い光が四方八方に飛散して強烈な爆発音が鳴り響き、蠢(うごめ)くような声と共に魔のみが、まるで、

More Chapters
Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status